「なんとなく体調のよくない日が続いている」「病気ではないのに元気がない」 子どもの様子を見てそう思ったことはありませんか?
子どもの不調の原因は、もしかすると食事や生活習慣が季節に合っていないのかもしれません。
今回は、子どもの体調が整う、家庭でできる季節の養生についてご説明します。「子どもに元気がないな」と感じたら、季節の養生を生活に取り入れてみましょう。
漢方でよく聞く、養生ってなに?
漢方でよく使われる養生という言葉は『命を養う』という意味。
食事や睡眠などの生活習慣を整えることによって健康を維持することをさしています。
養生と聞くと、「食事は決められたものしか食べられない」「朝は早く起きなければいけない」など、厳しい生活習慣のことなのでは?と思う方もいるかもしれませんが、実は、そんなことばかりではないのです。
漢方では、体質や季節に合わせた養生が大切だと考えています。
例えば、「春は早く起きたほうがいいけれど、夜は遅めに寝ても大丈夫」「春は苦味のある野菜を摂りましょう」など、季節に合った過ごし方や旬の食材で体調を整えていきます。
誤解されがちですが、体によいものを食べれば体調が整うというわけではありませんので、季節の養生を意識して過ごしていきましょう。
漢方などの東洋医学と西洋医学ではそもそもの考え方が違います。
西洋医学では、部分的な体の症状を重視するため、頭が痛ければ頭痛、お腹が痛ければ腹痛の薬を飲みます。
一方で、東洋医学は体全体を重視するため、同じ頭痛でも人が違えば異なった薬を選びます。
つまり、漢方では体全体の様子を見て、食事や生活習慣を見直していくのです。 季節によって養生が異なる理由は、春夏秋冬の気温が違うだけでなく、季節ごとにそれぞれ特徴があるからです。
例えば、春は植物が芽をだし、動物も活動的になる季節です。
同様に人も春には活動的になりますが、陽気が盛んになるためにイライラする人が増えます。
「うちの子どもが怒りやすくなったのは、春が原因だったのか!」と、養生を知った後で親が子どものイライラの原因に気づくこともあります。
また、漢方には陰陽五行説という言葉があり、この世界にある全てのものには陰と陽があると考えています。
季節にも陰と陽があり、春から夏になるまでは陽、夏から秋そして冬になると陰が強くなります。陰と陽は常にバランスを保っていることが重要とされ、人の健康にも大きく影響すると考えられています。
季節ごとの特徴や人に与える影響を考えて、その時節に合わせた過ごし方をしたいものですね。
とはいえ、子どもは自分自身で健康を意識することが難しいため、大人がしっかりと気を配ってあげなくてはいけません。
また、子どもは体がまだ未熟なために、体調が不安定になることがよくあります。まずは子どもの様子を見ながら、体質と季節に合わせた養生を無理なく取り入れていきましょう。
子どもの自然治癒力を高める季節の養生とは
漢方では、自然の中で起こる陰陽の変化は体に影響を与えると考えられています。
陰は「日陰」「夜」・「寒い」・「暗い」などが、陽には「日向」・「昼」・「熱い」・「明るい」などの特徴があり、これらのバランスが保たれていると健康が維持できます。
体調を整えるためには、その季節に育った旬の野菜や果物をとることが大切です。旬の食材には体の体調の変化を抑える働きがあります。四季の変化に合わせて家族の生活スタイルも一緒に変化させていきましょう。
・春の養生
春は植物が芽を出し、すくすくと育ちます。今までじっとしていた動物も少しずつ動きだします。
人間も同じように、気候に合わせてのびのびと活動しましょう。ただし、春は温度差が激しく、風がよく吹きます。
漢方ではこの風が体に影響を与えると考え、くしゃみや鼻水が出る、頭が痛くなる、肌がかゆくなるなど、体の上の方に反応が出がちです。
また春にはイライラするなど精神的に落ちつかない子どもが増えます。怒りっぽくなったり、イライラしたりすることが増えたら、軽い運動やストレッチなどをすすめてみましょう。
また春に育つ旬の野菜や柑橘系の果物を食事に積極的に取り入れてください。
野菜では、たけのこやふきのとうなどの苦味のある食材がおすすめです。
解毒作業があるため、感染症の予防にも効果があります。果物ではレモン・オレンジなどの柑橘系のもがおすすめ。高まった気持ちを落ち着かせてくれます。
・夏の養生
夏は気温が高く湿気の多い季節です。暑さに体が負けてしまうと夏バテやむくみなどが起こりやすくなります。
夏は体中の水分が汗として外に出てしまうため脱水症状を起こしやすくなります。
熱中症のリスクも高まるため、水分をこまめに取ることが大切です。
ただ、冷たいドリンクやアイスは体を冷やしてしまい、体調不良の原因になりがちです。なるべく体に近い温度の水分をとるように心がけましょう。
また、水分をとりすぎると体の中に余分な水がたまりますので、お風呂で汗をかいたり軽い運動をしたりなどで、余分な水分は外に出すようにしましょう。
運動で多量に汗をかくと体を冷やしてしまいますので、運動時の服や下着は動きやすく吸湿性のよいものを選びましょう。
エアコンのきいた部屋にいる時間が長い場合は、お風呂に浸かって冷えた体をしっかりと温めることが大切です。
また、夏の暑さは胃腸の調子を崩しやすくなります。きゅうり・トマト・なすなどの夏の野菜は、体の熱を冷まし、汗のかきすぎを抑えてくれます。
冷えで胃腸の弱っている方は、しそやみょうがなどの香味野菜で体を温めていきましょう。
・秋の養生
秋は、これまで育った植物が実をつけはじめる季節です。
気温が下がり体調も整いやすくなるため、食欲が増す子どももいます。
また、乾燥した秋の空気が人の体に影響を与えます。
肌が乾燥したり、喉が痛くなったりするほか、便秘にもなりやすくなります。
体の乾燥をおさえるために、すぐにはおれるカーディガンや首元を温めるマフラーなどを用意しておきましょう。 保湿クリームなどで乾燥から肌を保護することも大切です。
乾燥した空気は体の中にもはいってきますので、体の中も潤うように意識しましょう。漢方では「酸甘化陰」(さんかんかいん)という言葉があり、甘いものとすっぱいものを組み合わせることで体が潤うと考えています。
梨・柿・りんごなどの果物をとって体を潤わせていきましょう。
また、白きくらげ・白ごまなどの白い食材は、肺を潤させると考えられおり、こちらもおすすめです。
・冬の養生
冬は植物が枯れ、動物たちも冬眠にはいるための準備をはじめます。
漢方では冬はエネルギーを蓄える時期だと考えています。
そのため、激しい運動や新しい行動は避けた方がいいとされています。 冬の間にエネルギーを無駄遣いしてしまうと、老化が進んでしまうので、エイジングケアに興味のある方は要注意です。
子どもの場合、集中力ややる気がなくなってしまうことがあります。
また、驚いたり、怖いことが起きると、精神が不安定になったり、耳に不調が起きることもあります。
冬の間には体を温めることを心がけましょう。冬に体を冷やしてしまうと春になったときに体調が悪くなります。冬の間の養生は次の季節の体調へ影響します。
健康を維持するために、毎日お風呂にはいって体を温めるようにしましょう。
とくに首・手首・足首にある太い血管の部分を温めることが大切です。
加えて、保温性のある下着や靴下を身に着けるなど、服や下着でも体を冷やさないよう工夫するとよいでしょう。
また、エネルギーを蓄えるためにたっぷりと睡眠をとることも忘れずに。
冬の季節の食べ物は、黒きくらげ、黒豆などの黒い食材がおすすめです。
また、生姜・ネギ・にんにくなど体を温める食材も積極的にとりいれましょう。
季節に合わせた養生は子どもを元気にさせてくれる
子どもには季節によって様々な体調の変化が表れます。
子供は自分で体調の変化を感じることが難しいため、母親の目から見て「ちょっといつもと違うな」と感じたら、季節の養生を意識してみてください。
何を食べればよいかわからない時は旬の食材を選ぶのがよいでしょう。
また、季節に合った衣類や下着で体温調節や乾燥対策を行ったり、お風呂や体操で冷え対策や水分調整を行うのもおすすめです。
食事、衣類、生活リズムを整えると、自然と子どもの元気と意欲がよみがえります。家庭でできることから無理なく季節の養生を始めてみてくださいね。