「足育(あしいく)」という言葉を聞いたことがありますか。足育とは「靴の選び方や履き方など、足に関する正しい知識を得て、理想的な足を育てること」です。その足育で一番大切な時期は3〜7歳。こどもの靴こそしっかり選んで、正しい履き方をさせる必要があるのです。
今回は、こどもの将来に大きな影響を与える、足育についてご紹介します。
こどもの靴を選ぶポイントとは?
「神経系の8割は、5歳までに作られる」といわれています。つまり5歳までにたくさん歩き、遊ぶことで、人生のベースが作られるといっても過言ではないのです。
赤ちゃんの足は、ふっくらとしていますね。これは軟骨が厚い脂肪で覆われているためです。足全体が柔らかいために、赤ちゃんはサイズが小さい靴でも履けてしまう上に、幼いこどもは「痛い」と伝えることができません。赤ちゃんの足は成長するにつれて骨化していきますが、その大切な時期の足の成長を、親がキチンと見てあげる必要があるのです。
幼少期に足に合わない靴を履くと疲れやすく、歩くことが苦手なこどもになってしまいます。そして5〜6歳頃までに形成される土踏まずもできにくくなるでしょう。
最近は、浮き指や内反母趾のこどもが増えています。裸足になっても足の指が曲がってしまっているのです。これには、親が見た目や脱がせやすさで靴を選んでしまっていることが影響しています。実に、7割のこどもたちが、足に何らかの変形やトラブルを抱えているといわれているほどです。
さらに爪にもトラブルは現れます。正しい靴の履き方をしていないために、靴の中で足が前滑りしている場合、爪が靴の先に当たって割れてしまうことがよくあります。また小指の爪がほとんどないという場合は、靴の幅が合っていない可能性もあります。たかが爪と思わず、小さなSOSを見逃さないようにしましょう。
こどもの足を守る正しい靴の選び方のポイントを下記にご紹介します。
ポイント1:ヒールカウンターを確かめる
かかとは、靴の命です。購入時は、かかとをサポートするための硬い芯「ヒールカウンター」が入っているかどうかをチェックしましょう。ヒールカウンターが入っていないために、かかとを簡単に踏めてしまう靴は理想的とはいえません。
ポイント2:中敷を使って、サイズを確かめる
靴はつま先部分に1〜1.5cmの余裕があるものを選ぶことが重要ですが、靴の外からサイズは分かりづらいものです。その場合は、中敷を取り出して、その上に足を置いてみましょう。しっかりつま先に余裕がある靴を選ばなくては、足指を使った歩行ができません。
ポイント3:足はキチンと測りましょう
靴をサイズだけで選ぶのは、服を身長だけで選ぶようなものです。足の長さ、幅、太さ、かかと幅、甲の高さ、指の長さ、足指の太さなど、チェックすべき項目はたくさんありますが、まずは正しい長さと幅をキチンとお店で測定しましょう。
メーカーによってもサイズ感は違うので、購入時は必ずこども本人を連れて行き、靴を試し履きしてから決めることが大切です。「どうせ大きくなるから」と大きいサイズを買うことも、「本人が『これがちょうどいい』と言ったから」と、サイズ選びをこども任せにすることも、良くありません。
ポイント4:かえしをチェックする
靴底を曲げた時に、靴が曲がる位置を「かえし」と言います。正しい歩行には、自分の足の指が曲がる位置と、靴のかえしが同じ位置にあることが重要です。
ポイント5:子どもの靴はこまめに買い替えましょう
3歳までは3ヶ月ごと、3歳以降は半年ごとの買い替えが理想です。平均すると女子13歳、男子15歳まで、足のサイズが大きくなり続けますので、その年齢まではサイズアウトに常に注意して下さい。こまめな買い替えは大変ですが、履いた靴には足型が残りますので、靴のおさがりもできれば避けましょう。
中敷にかかとを合わせて、つま先残り5mmになったら買い替えのタイミングです。運動会の前に、足が速くなるように新しい靴への買い替えをする保護者が多いようですが、できれば夏休み明けに一度サイズチェックをして、必要であれば買い替えをするのがおすすめです。というのも、夏は日照時間が長いため身長が伸びやすく、身長とともに足のサイズが大きくなっている可能性が高いからです。2学期が始まる前、サンダルからスニーカーに履き替える時期に、こどもの足のサイズをチェックするようにして下さい。
運動靴や上履きこそ、機能性重視で選ぼう
こどもは、毎日活動的に過ごしています。そんなこどもの足を守る靴は、親がしっかり選ぶようにして下さい。
特に運動部に所属している子は、靴選びがパフォーマンスに大きな影響を与えます。全身の筋肉の7割は下半身にあるため、合わない靴を履いていると、下半身がコントロールできずに、踏ん張りがきかなくなってしまうからです。さらに合わない靴は、疲労骨折・成長痛・足の変形の原因にもつながります。
そして意外と見落としがちなのが靴紐です。部活などで激しい運動をする場合は、1ヶ月で3cmほど靴紐が伸びることもあります。靴のフィット感をキープするために、靴紐は1ヶ月に一度替えるのがベスト。そして丸紐よりも平紐の方が、サポート力があるのでベターです。
また、折角ぴったりの靴を買っても、靴下が小さいままでは足指の動きを阻害してしまいます。靴下も靴のサイズが変わったら意識して買い換えましょう。土踏まずを引き上げてくれる、土踏まずアーチサポートがある靴下などは、歩行・運動時の疲労軽減や安定性向上に役立ちます。
最近は、上履きの中でも、靴紐やマジックで甲部をしっかり固定できる高機能上履きが出ているのでぜひ利用しましょう。数百円代の安い上履きは、かかとに芯が入っていない上に、ゴムバンドで指が前滑りしてしまう可能性が高いため、こどもの足育には不向きです。
通気性のあるアッパー、しっかり屈曲するソール、軽量素材の靴などは毎日の通学に最適。泥だらけになる運動部には、黄ばみにくい素材を使用っている商品なども嬉しいですね。
必ずマスターしたい! 毎日の靴の履き方
良い靴を買ったら、正しい靴の履き方をマスターしましょう。
靴紐は脱ぐたびに緩めて、履くたびに結ぶのが理想です。足と靴を固定すること、正しい筋肉を使うことができるようになります。マジックテープの靴も毎回外して足を入れて、かかとを床にトントンとたたきつけてから留めましょう。
靴を履く時、靴紐やマジックテープをゆるめずに足を滑り込ませ、つま先を床にトントンとしていませんか。かかとと靴がフィットしなくなるので、これはやめましょう。ひと手間ではありますが、靴を履く際は、(1) 靴紐やマジックテープをゆるめて足を入れる (2) かかとを床にトントンとさせて、かかとを靴に合わせる (3)靴紐やマジックテープをしっかりしめる、という3つのプロセスを踏んで下さい。靴のフィット感が、大きく変わってくるはずです。大切なかかとをいためないために、足を靴に入れる際に靴べらを使うのも良いでしょう。
足の骨にはアーチがあります。足のトラブルを防ぐためにも、指やアーチを使って歩くことが必要です。そのためには、靴を正しく選ぶこと、正しく履くこと、どちらも大切であると心がけて下さい。
親が正しい靴との付き合い方を見せてあげよう
日本人の多くは、靴紐を結びっぱなしのまま、靴を履きます。しかし足育先進国のドイツでは、大人もこどもも、履くたびに靴紐を結び直す伝統があります。日本人の親がこどもにお箸の正しい持ち方を教えるのと同じように、ドイツには、こどもに靴の正しい履き方を教えることは親の責任だと感じる文化があるからです。日本人が「食べること」を大切に考えるように、ドイツ人は「歩くこと」をとても大事にして生活しているのです。
こどもの足を守るためには、まずは親が正しい知識を持って、こどもの靴を選び、履き方を見せてあげましょう。身近に良いお手本があれば、こどもにも靴紐やマジックテープを毎回締め直す習慣が身につきます。足と靴に対する正しい知識を持って、こどものまっすぐな脚ときれいな歩き方、そして健康な体を育ててあげて下さい。